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精神保健福祉士よりごあいさつ

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精神保健福祉士/社会福祉士/宅地建物取引士 
齋藤 瞳

不動産屋として活動しながら持った人々の「自立」への模索

 初めまして、精神保健福祉士の齋藤瞳と申します。
 私のこれまでの歩みと、しろくま・メンタルクリニックで活動することになった経緯についてお話したいと思います。
 私は不動産屋として働きだしたとき、もともと福祉にも医療にも全く携わっていませんでした。私は平成28年に不動産屋として独立しましたが、その時は普通の不動産屋でした。ところが生活保護を受給されている方のお部屋探しのお手伝いをしたのがきっかけで、障害をお持ちの方やDVの被害者・児童養護施設退所者など、に関わるようになりました。こうした方々には、まだまだお部屋探しに困難が伴います。そのお部屋探しをお手伝いする中で、単にお部屋を探すだけではなく、その方々の「自立」について考えていくようになりました。そして手探りで懸命に「自立」について模索していくと、そのためには幾つもの課題があることなどもわかるようになっていきました。

 
 
 
 
精神保健福祉士 齋藤 瞳
 

人々の「自立」を手助けするために社会福祉士を取得

 困難を抱える方々の「自立」はその人だけの問題ではなく、私は今こうして暮らしている社会にとってそのままにはできない問題なのではないかと思い、それならばしっかりと学び、彼らの「自立」を通じて私自身が社会の何かしら役に立てるのではないかとの思いが芽生え、そこから学校に通い社会福祉士を取得するに至りました。

精神障害を持つ人々のすまいと暮らしの困難さを改めて知る

 資格を取得して、少しはできることも増え、お部屋探しもスムーズに進むようになってきてはいましたが、そんな中においても精神障害をお持ちの方のお部屋探しは困難しかありませんでした。「精神障害者」というワードを出すと、ほとんどのお部屋が借りられない現状がありました。でも、今私の目の前にいる方は、次のステップに進むためにどうしてもお部屋をもつ(転居する)ことが必要で、ご本人もなんとか「自立」したいと思っているのに、うまく進めることができないケースがたくさんありました。「どうしたら大家さんも安心して貸すことができるのだろうか」と日々そればかり考え続けていました。

 
 

自分なりの「ソーシャルワーク」を始めてみた

 私がたどり着いたのが医療や福祉・行政の方を少しずつ巻き込みながらその方を中心にして支援(見守る)ということでした。それまでは私一人でその方をなんとかし支援しなくては、引っ越した後も全部一人で見ていかなくては、と思ってきたのですが、やはりそれには限界があり、私自身も心身ともに疲弊してしまいました。改めてそれではだめだ、と思い知りました。
 そこから自分で行政や福祉機関などを回ったりしながらお一人お一人に徹底的に向き合いながら関わってきました。手探りで自分自身で考えながら、自分なりのソーシャルワークをしてまいりました。
その結果、お話を聞いてくださる大家さんが少しずつ増え、様々な方々のサポートのもと一人暮らしをスタートさせていく方も増え、一人でなんとかしなければと動いていた時とは比べ物にならないくらいスムーズに「地域移行」を進めていくことができるようになりました。

行政と福祉と医療機関は思ったほど連携できていないことを痛感

 そんな中、今でも忘れられないような悲しい出来事も経験することになりました。行政の方々と医療機関の連携がうまくできておらず、こちらにその方の医療に関する情報が適切に入らず、その結果、良かれと思って部屋探しをお手伝いしてしまったことが逆に仇となってお亡くなりになってしまったのです。

 
 

地域移行と地域定着支援は医療が軸になるべき

 そこで私は、医療が軸になって精神疾患をもつ患者さまの地域移行と地域定着を支援する必要があるのではないかとの思いに至りました。地域移行と地域定着はまとめて語られることが多いですが、私の関わってきた方々を見てみると、地域での暮らしを始めた後、関わるのは行政や福祉の機関の方々ばかり。地域にともに住まう方と接点を持っている方はとても少ないということに気づきました。これでは地域に定着しているとは言えません。結局私が作ってきたのは地域移行の枠でしかないのではないか、と自省しました。本来、地域で暮らすというのは、そうではないはずです。ちょっとわからないことがあれば近くの人に聞くことができるというのが地域で暮らすという本来の意味ではないのか。私は、自分が体調を崩している時に、隣りに住んでいる人が代わりにゴミを捨ててくれるような関係を作りたいと常々思ってきました。遠くもなく近くもない距離で、そっと見守り合い続ける関係。このような地域の社会資源を加えて地域定着をしていくことこそ私の役割なのではないかと確信しました。大家さんが安心して貸すためには「医療」の関わりが絶対必要だし、その上で地域と繋ぐのが医療ソーシャルワーカーの役割だという思いから、不動産屋とソーシャルワーカーを併せ持った活動をしようと思いました。

医療が軸になるためにと精神保健福祉士の資格を取得

 そして、医療との接点のきっかけを作りたいと思い、精神保健福祉士の資格を取得するために動き始めましたが、肝心な医療との接点はなかなか持つことができませんでした。学校に通い、病院で実習もしました。自分が連携してきた福祉の方々や行政の方々にも、自分と同じ思いを持っている医師がいないか、その医師と連携ができないのか、と声をかけ続けましたが、全くそのような医師を見つけることができないままでした。

 
 

 

医師とやっと連携できることになった

 そんな中、私の活動の様子をテレビ番組で見た大熊先生が私に連絡をしてきてくださいました。私はこの機会を逃してはいけないと思い、大熊先生とたくさん自分のやりたいことや思いについて語り合いました。お互い患者さんたちが地域で暮らすためには「医療」「住まい」これが重要だという認識に疑いはないことを確認し合い、そこに「就労」を加えて、患者さんたちの「自立」のために活動しようという話になりました。
 
 

しろくま・メンタルクリニックでソーシャルワーカーとして働く

これがしろくま・メンタルクリニックの開院につながりました。私はソーシャルワーカーとしてしろくま・メンタルクリニックで働きながら、患者さんの「自立」にむけて動いて行こうと思います。

私たちは医療を提供するだけのクリニックにしたいのではありません。

 あくまで患者さんの「自立」にフォーカスします。その方が5年後10年後どういう暮らしをしていくのか、そのために今何をするのかをご本人と一緒に考えてまいります。そして、ソーシャルワーカーとしてそのための社会資源とご本人を繋げ、支援体制を作っていきます。また、不動産屋としても、ご本人の自分らしい暮らしのために、大家さんとご本人とを繋げていきます。これは私にしかできないことだと思っています。
 

私のモットー

 私は不動産屋を立ち上げた時「一生付き合える不動産屋」というモットーを掲げました。お客様と接する時にはいつもそれを考えながら接してきました。おかげで、今でもお付き合いをしているお客様がたくさんいらっしゃいます。その方が別のお客様を紹介してくださったり、お客様自身が次にステップに向かわれる時に様々なご依頼で私にお声をかけてくださったり。お客様が自分らしい暮らしをしながら「自立」していく姿を見ることは何にも変え難い喜びです。私の考え方は今も変わりません。

 

 

 今後はいち不動産屋としてではなく、しろくま・メンタルクリニックの一員として、患者さんとしっかりと向き合い、患者さんが「自分らしい暮らしってなんだろう」と考えるお手伝いをしながら、その方の「自立」に向かう伴走者となっていきたいと思っています。
 皆様、どうぞよろしくお願いいたします。

精神保健福祉士/社会福祉士/宅地建物取引士
齋藤 瞳